スイスショック スイス国立銀行 スイスフラン

よく分かるスイスショック

日本時間2015年1月15日の夕方18時過ぎに、スイス国立銀行(SNB)は、
2011年9月6日から3年以上も続けてきた、スイスフラン売りユーロ買いの為替介入の廃止を発表しました。
(それまでは、1ユーロ=1.20スイスフランよりもスイスフランが高くならないように、
つまりユーロスイス(EUR/CHF)のレートが1.20を下回らないように為替介入を続けてきました)
この発表を受けて、スイスフランが急騰。
対ユーロで40%を超える上昇、対ドルや対円でも約30%の上昇をしました。
この出来事はスイスフランショックまたはスイスショックと呼ばれていますが、
どうしてこのようなことが起こったのでしょうか。

 

安全資産とは

今回のスイスショックを解説するには、安全資産とは何かを知る必要あります。
安全資産とは、相場が変動しても元本が目減りするリスクが小さい金融商品のことです。

 

たとえば、定期預金などの預貯金は元本以上には目減りしない【元本保証】の金融商品であるため、代表的な安全資産です。
また、国債も満期まで保有し続ければ元本が保証されるため、安全資産に分類されます。
(国家が破綻した場合には、この限りではありません。そのため、国債でも先進国のものは安全資産であるといえますが、情勢不安を抱えた途上国の国債は安全資産には分類されないことが多いです)
安全資産は、保有リスクが小さいかわりに、収益性が低いのが特徴です。

 

一方、株式や投資信託は基本的に元本が保証されないため、リスク資産と呼ばれます。
リスク資産は、元本が保証されないかわりに、高収益が狙えることが多いです。

 

また、為替は、通貨(国家)によって、安全資産にもリスク資産にも分類されます。
どういうことかというと、為替取引は、2国間の通貨の交換なので、その時々によって、どこの通貨が買われやすいかが変わります。
基本的には、世界が金融危機などによってデフレ傾向にあるときには、低リスクで収益性も低い安全通貨が買われ、好景気でインフレ傾向にあるときには、リスクが高くても高収益を狙えるリスク通貨が買われる場合が多いです。

 

そして、2015年1月現在、安全通貨の代表格は、円、米ドル、スイスフランです。
これらの通貨は、世界的に流通量が多く、国の情勢も安定しているので、基本的には売買したいときにできるものであるのに対し、
南アフリカランドやブラジルレアル等のリスク通貨は、流通量が少なく、売買が一時的に成立しないことがあります。(買い手と売り手の両方がいないと為替取引が成立しないため)

 

スイスフランの対ユーロ為替上限設定の背景

2008年9月にアメリカで起こったリーマンショックの影響は欧州にも波及し、不動産バブルが崩壊するなどユーロ圏の財政悪化が進みました。
さらに、ギリシャの財政赤字が報告されていたものよりも大きいことも発覚。ギリシャは破綻の危機にさらされます。
また、ギリシャは統一通貨ユーロを導入している国家であることが、状況をさらに複雑にします。
ギリシャの破綻の影響は一国の破綻だけでは済まされないため、イタリア、スペイン、ポルトガルなど他のユーロ圏各国の景気も悪化する中、2010年5月にはギリシャへの支援が決定されます。
その後も、欧州の景気はさらに悪化。市場ではユーロ崩壊の危機がささやかれるまでになります。
いわゆるユーロ危機ですが、この頃にはユーロから比較的経済圏の近く、経済が比較的安定していたスイスに資産が多く流れ、スイスフラン高となりました。
過度のスイスフラン高は、自国の経済に悪影響を及ぼすこともあるため、スイス国立銀行は2011年9月6日に対ユーロで1.20よりもフラン高にならないように、無制限の為替介入を続けることを表明し、その後は1.20の水準に近づくと無制限に介入がなされ、フラン高を防いできました。

 

スイスフランの対ユーロ為替上限撤廃の背景

無制限の為替介入を行ってきたスイス国立銀行ですが、欧州の景気がなかなか回復しないため、自国通貨高を防ぐための為替介入の規模が次第に大きくなり、スイスの外貨準備はGDPの7割を超えるまでの規模になっていたのです。
その間も、ユーロ圏の景気悪化がさらに進み、約1週間後に開かれるECB(欧州中央銀行)の会合での量的緩和が確実視されている状況でした。
ユーロ圏でさらなる金融緩和がなされると、さらにユーロ安フラン高が進み、介入の規模が増大する懸念がありました。
そこで、2015年1月15日にこれ以上の介入を続けることをできないと判断したスイス国立銀行は、突如対ユーロの為替上限の撤廃を発表したのです。

 

スイスフランの対ユーロ上限撤廃を受けた市場の反応

3日前に、スイス国立銀行のダンティーヌ副総裁「スイスフランの上限は今後も金融政策の基礎であるべきと確信している」と発言するなど、スイスの金融政策は今後も維持されていくと見られる中でかなりのサプライズであったため、マーケットは大混乱。
一時レートの配信が停止するなどのパニック事態となりました。
ユーロスイスは1.2000から0.8500付近へ下落するなど、40%を超える変動は、私も初めてみました。
ユーロスイスはあまりみなさんにもなじみのない通貨だと思いますので、ドル円が突如120円から80円付近まで下落したような状況を想像すると、どれほどの変動だったのかが分かりやすいと思います。
今回の例でも分かるように、為替介入等によって人工的に為替レートを操作する政策はいつか破綻します。
やはり為替レートは市場参加者の需給関係によって決まっているのです。

 

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